2025年5月、茨城県でマダニを通じて感染する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」にかかった飼い猫が確認されました。関東の自治体によるペットの感染確認は初めてです。ヒトへの感染は確認されていません。
三重県では、SFTSに感染した猫を治療した獣医師が死亡するという深刻なケースも発生しました。
SFTSは、猫が発症した場合の致死率が6〜7割、日本でヒトの致命率は27%(10〜30%)とされています。
健康なネコやイヌ、屋内のみで飼育されているネコやイヌからヒトがSFTSウイルスに感染した事例はこれまでに報告されていません。 発症した猫から咬まれたり体液に触れることで感染します。
予防はマダニに咬まれないこと、咬まれて症状がでたら早く対処すること。正しい知識を知り、予防と対策をきちんと行うことで、過度に恐れる必要はありません。
この記事では、飼い主さんが知っておくべきSFTSの正確な情報と効果的な予防法について、冷静かつわかりやすく解説します。
SFTSとは?|マダニが媒介する感染症の基本を知ろう

「ニュースでSFTSという病気を聞いたけれど、うちの猫は大丈夫?」

「飼い猫からSFTSに感染することもあるの?
そんな不安を感じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは
- 主にマダニが媒介
- ウイルスが原因で発症
- 2013年に日本で初めて確認された比較的新しい人獣共通感染症
- ネコ科に感受性が高い
マダニとSFTSについて知っておきたい事実
テレビやメディアで「飼い猫がSFTS感染した」と聞いて、慌ててしまうヒトが多いかもしれませんね。
でも、
- マダニのSFTSウイルス保有率は0〜数%と低い
- 咬まれて発症する確率は0.3%程度
です。
どこから感染するの?感染ルートは?
多くの場合、ウイルスを保有するマダニに刺されて感染します。
SFTSウイルスを持つマダニの割合は0〜数%
日本国内では、複数のマダニ種からSFTSウイルスの遺伝子が検出されています。ウイルス保有率は地域や季節によって異なりますが、0〜数%程度です。
すべてのマダニがウィルスを保有しているわけではないです。
マダニに咬まれてSFTSを発症する確率は0.3%
マダニに咬まれてSFTSに感染する確率は、病原体の数や咬まれた人・動物の免疫状態によって異なります。
- 発症する確率:約0.3%
- 発症しても軽度なら無症状か軽い風邪程度で済む場合もある
- ただし発症者の27%が死亡する重篤な感染症
- 現在、治療薬は存在せず対症療法のみ
- 重症の場合「アビガン(一般名:ファビピラビル)」が検討される。インフルエンザ治療薬として開発された抗ウィルス薬です。
【人間の場合】感染リスクが高い年齢層は?
- 患者の年齢層:5歳〜90歳代
- 全患者の約90%が60歳以上
- 死亡患者の多くは50歳以上
- 高齢者は重症化しやすい
日本でSFTS患者はどのくらい発生していますか?
2013年1月、SFTSの患者(2012年秋に発症)が国内で初めて確認されて以降、2020年まで毎年60~100名程度の患者が報告されていました。
2021年以降は、毎年100名を超える患者が報告されており、2023年は過去最高の133名の患者が報告されています。(厚生労働省)
- 西日本での発症が多い
- 最近では関東圏でも猫の感染が確認された
日本全体で100名ちょっとということは、決して多い数ではありません。むやみに恐れることはなく、しかし、感染症は初期の抑え込みが重要なことを念頭におき、感染を防ぐ努力をしたいですね。
マダニとSFTSウイルスについて知ろう
マダニと家の中にいるダニとは違うのでしょうか?
マダニとは?家の中にいるダニとは違うの?
マダニは、家庭内にいる一般的なダニとは全く異なる生き物です。
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家庭内のダニとは…
- 食品に発生するコナダニ
- 衣類や寝具に発生するヒョウヒダニ
- 植物害虫のハダニ類
これらとマダニは種類が全く違います。
マダニの特徴
- 固い外皮に覆われている
- 比較的大型(吸血前:3〜8mm、吸血後:10〜20mm)
- 主に森林や草地に生息
- 郊外や市街地でも生息している
SFTSウイルスを持つマダニの種類
日本には命名されているものだけで47種のマダニが生息していますが、以下の種類でSFTSウイルス遺伝子が確認されています。
- フタトゲチマダニ
- ヒゲナガチマダニ
- オオトゲチマダニ
- キチマダニ
- タカサゴキララマダニ
日本では少なくともフタトゲチマダニとキチマダニが人への感染に関与しています。
マダニについてはこちらの寄生虫に関する記事もお読みください>>

万が一SFTSにかかったらどうなるの?症状と潜伏期間
では万が一、SFTSにかかったら、何日くらいでどんな症状が出るのかを知っておきましょう。
潜伏期間は6〜14日間
マダニに咬まれてから6〜14日程度の潜伏期間があります。
人間や猫の場合どんな症状が出るの?
考えられる症状は次のようなものがあります。
人間の場合
- 38度以上の発熱
- 食欲低下
- 嘔気・嘔吐
- 下痢
- 腹痛
猫の場合
- 発熱
- 元気消失
- 嘔吐
- 黄疸
- 約6割が死亡する重篤な症状
症状に気づいたら「マダニに咬まれた」ということを伝え、速やかに医療機関を受診しましょう。
感染が疑われる場合、医療機関・動物病院側も下のような対策をしなくてはなりません。
- 隔離対応
- PPE(個人防護具)の装着
- 適切な感染対策の実施
などなど…
マダニとSFTSを避ける普段の予防対策とは?
SFTSはマダニに咬まれることを避ければ、十分に防ぐことができる病気です。
ヒトがマダニに咬まれないための予防対策3選
基本は肌を露出せず、虫除けをし、マダニがついていないかを確認することです。
屋外活動をするときには服装に気をつける
- 長袖・長ズボンを着用
- シャツの裾はズボンに入れる
- ズボンの裾は靴下や長靴に入れる
- 足を完全に覆う靴を履く(サンダル禁止)
- 帽子・手袋を着用
- 首にタオルを巻く
- 明るい色の服を選ぶ(マダニを発見しやすい)
虫除け剤の使用
DEET(ディート)やイカリジンを含む虫除け剤を服の上から使用する
帰宅後のチェック
入浴時に以下の部位を重点的にチェックする
- 首
- 耳
- わきの下
- 足の付け根
- 手首
- 膝の裏
猫のためのマダニ・SFTS予防対策
猫がマダニに咬まれないようにするには屋内飼育が基本、ダニ駆除剤も有効です。
最も有効な対策は完全屋内飼育です。
- 猫を外に出さない
- 完全室内飼いが最も確実な予防法
【実際のケース:茨城県での事例】
2024年5月、茨城県で室内飼いの1歳メス猫がSFTSで死亡した事例が報告されました。
この猫は普段は室内で飼われていましたが、屋外へ脱走してしまい、耳に小さなダニが多数付着した状態で発見されました。病院でダニを除去しましたが、数日後に高熱、食欲低下、嘔吐の症状が現れ、治療を受けるも12日後に死亡してしまいました。
このケースは、たった一度の脱走でも命に関わる感染症にかかる可能性があることを示しています。室内飼いの猫でも、脱走防止対策を徹底することが重要です。
マダニ駆除薬を定期的に使用
室内飼育であっても飼い主が外から持ち込むリスクはあります。
外に出る猫の場合は…
- マダニ駆除薬を定期的に使用
- 散歩や外出後は体表チェックを徹底
- 保護猫にも同様の対策が必要
もしも猫にマダニがついていたら?
- ダニ駆除剤を使う…ペット用のダニ駆除剤がありますのでかかりつけ獣医師に相談しましょう。
- 目の細かいくしをかける…マダニをとるのに有効です。
咬まれている場合は、ヒトでも猫でも無理に引きはがさず病院に行きましょう。次の章「万一マダニに咬まれたときの対処法」でくわしく説明します。
マダニは洗濯で死滅する?
マダニは洗濯では死滅しません。
- マダニは繊維に強くしがみつく
- 水や洗剤だけでは落ちにくい
効果的な駆除方法は乾燥?
マダニ対策には乾燥が有効です。
- 天日干し
- 乾燥機でよく乾かす
- マダニは乾燥に弱いため死滅する
万が一に備えて知っておこう!マダニに咬まれた時の対処法
万が一マダニに咬まれた場合は、自分では絶対に引き抜かずに、医療機関で対応してもらいましょう。
絶対にやってはいけないこと
無理に引き抜かない
- マダニの一部(口器)が皮膚内に残る可能性ある
- マダニを潰したりすることで、マダニの体液が逆流し、病原体が体内に入りやすくなる
正しい対処法
- 医療機関を受診(皮膚科など)
- 専門的な処置でマダニを除去してもらう
- 数週間は体調変化に注意
- 発熱等の症状が現れたら速やかに受診
- 受診時はマダニに咬まれたことを必ず医師に伝える
【FAQ】
よくある質問をまとめてみました。
SFTSはマダニ以外から感染するの?
マダニ以外の吸血昆虫からSFTSにかかることはありません。一般的に病原体を媒介する節足動物はほぼ決まっています。
食べ物からの感染はあるの?
動物由来食品(肉や乳など)を食べることによる人への感染事例は報告されていません。ジビエは十分に加熱してください。
野生動物の感染状況
シカやイノシシなどの野生動物、猟犬からもSFTSウイルスに対する抗体が検出されています。野生動物には素手で触らないことです。
まとめ:正しい知識で冷静に対策を
SFTSは致死率の高い感染症として注意が必要ですが、過度に恐れることなく、正しい情報に基づいた冷静な対応が重要です。
基本は人間がマダニに咬まれないこと、猫がマダニに咬まれないようにすることです。
人間からペットへの感染を防ぐためにも、飼い主の予防対策は重要です。愛猫の健康を守るため、正しい知識を持って冷静に対処することが大切。
不明な点があれば、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
この記事は主に厚生労働省や獣医師会など信頼できる機関の情報を元に書いていますが、最終的にはご自身の責任で正しく判断してくださいね。
参考資料 厚生労働省:
この記事の執筆者 / 監修者

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🐾動物専門・ペット特化ライター&デザイナー
🐾猫専用ペットホテルキャッツカールトン代表
🐾慶應義塾大学卒
🐾動物取扱責任者・愛玩動物飼養管理士・登録販売者
🐾現在は猫4匹との暮らし。幼少時から犬、リス、うさぎ、鳥、金魚などさまざまな動物と過ごし、生き物を愛してやまない毎日。
🐾前職は大手企業で広報、編集校正やってました。
らみえるってこんな人
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