保護猫を迎える費用はいくら?譲渡費用3〜4万円の内訳と、団体が1頭9.6万円を負担している現実

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「え、保護猫を引き取るのって、お金がかかるの?」

以前、知人にそう驚かれたことがあります。わたしはときおり保護活動のお手伝いをしているのですが、このときはうまく答えられませんでした。かかります、とは言える。けれどその数万円が何に使われているのかを、順序立てて説明する言葉を持っていなかったからです。

この反応は、けっしてめずらしいものではありません。保護猫にはペットショップで迎えるより費用を抑えられるイメージがあり、実際に譲渡会に足を運ぶと

  • 1頭あたり3万円
  • ワクチン代・不妊去勢手術費として4万円

といった金額が提示されます。無償で譲り受けられるものだと思っていた人ほど、戸惑いやすいポイントです。

その説明に使える数字が発表されました。2026年9月8日、犬猫生活株式会社が全国120の保護団体を対象にした調査「全国 犬猫保護活動 実態白書2026」を発表。

1頭を保護して譲渡するまでに、平均9.6万円(人件費を除く)がかかっている

ことが明らかになっています。

この記事では、まず「迎える側が実際にいくら用意すればいいのか」を整理し、そのうえで「その金額の裏側で何が起きているのか」を見ていきます。

※画像は「ねこのこと。」編集部で作成したものですので、無断転載は禁じます。

目次

保護猫の譲渡費用の相場は3〜4万円

まず結論から言うと、里親が支払う譲渡費用の相場は3〜4万円程度です。犬猫生活株式会社の調査で示された全国の平均的な水準で、団体や猫の状態によって上下します。

譲渡費用に含まれている主なもの

団体によって内訳は異なりますが、おおむね次の費用がまとめて含まれています。

項目内容・目的
混合ワクチン接種猫風邪や猫汎白血球減少症などの予防。子猫は複数回必要
不妊去勢手術繁殖の防止に加え、生殖器系の病気の予防にもつながる
ウイルス検査猫エイズ(FIV)・猫白血病(FeLV)の感染確認
ノミ・ダニ駆除、駆虫保護直後に実施。先住猫がいる家庭では特に重要
マイクロチップ2022年6月以降、販売される犬猫は装着と登録が義務化
保護期間中の飼育費フード代、猫砂などの消耗品

ここで押さえておきたいのは、これらが「その猫1頭にかかった実費の一部」だという点です。譲渡費用は団体の収益ではなく、すでに支出した医療費などを一部回収するためのもの。そう捉えると、金額の意味が見えてきます。

金額の大小ではなく「どこまで済んでいるか」で見る

譲渡費用には幅があります。「無料で譲ります」という募集もあれば、5万円近い設定のところもある。ただ、この差は活動の姿勢を表すものではありません。どの処置まで済ませた状態で引き渡されるかによって変わる、というのが実態に近い見方です。

無料・低額の場合は、

  • 子猫でまだ不妊去勢手術の月齢に達していない
  • ウイルス検査がこれから

といったケースがあります。迎えた後にご自身で動物病院に連れて行くことになるので、結果的に数万円の出費が発生する。逆に費用が高めのところは、手術・検査・マイクロチップまで完了していることが多くなります。

つまり、総額としての負担はどちらでも大きくは変わらないことが少なくありません。比較すべきは提示額ではなく、次の項目です。

確認すること見るべきポイント
混合ワクチン何回接種済みか。次回の接種時期
不妊去勢手術実施済みか。未実施なら時期の目安と費用負担の取り決め
FIV・FeLV検査結果を書面で確認。先住猫がいる場合は必須
ノミ・ダニ、駆虫実施の有無と時期
マイクロチップ装着済みか。登録情報の変更手続きの案内があるか
健康状態持病・投薬の有無。直近の通院歴

個人の保護活動者から迎える場合も、団体から迎える場合も、確認すべきことは同じです。質問したときに、記録や検査結果を見せながら具体的に答えてもらえるかどうか。それがひとつの目安になります。

譲渡費用のほかに用意しておきたいお金

猫を迎えるときに必要なお金は、譲渡費用だけではありません。金額は住まいや猫の状態によって変わるため、まずは項目を押さえておきましょう。

迎える前にそろえるもの

迎え入れの当日までにそろえておきたいものです。あとから買い足すこともできますが、ケージとキャリーバッグ、トイレのまわりだけは先に用意しておくと、猫も人も落ち着いて初日を迎えられます。

アイテム押さえておきたいポイント
ケージ先住猫がいる家庭では対面までの隔離に必須。多段タイプが使いやすい
キャリーバッグ引き取り当日から必要。通院・災害時にも使うため上開きタイプが便利
トイレ・猫砂保護先で使っていた砂の種類を聞いておくと失敗が少ない
食器・水飲み器高さのあるタイプは食べこぼしや吐き戻しの軽減につながる
爪とぎ・隠れ場所環境が変わる直後は隠れられる場所があると落ち着きやすい
脱走防止対策窓・玄関の柵やネット。譲渡条件になっている団体も多い

迎えた後に継続してかかるもの

猫との暮らしは15年、20年と続きます。毎月かかるもの、年単位でかかるもの、シニア期に増えていくものを、あらかじめ分けて把握しておきましょう。

費目備考
フード・猫砂など消耗品毎月の固定費。療法食が必要な場合は割高になる
ワクチン、健康診断年1回が目安。シニア期は回数が増えることも
通院・治療費ペットに公的医療保険はなく全額自己負担。シニア期に増加
ペット保険料加入する場合。年齢が上がるほど保険料も上がる
ペットホテル・シッター帰省や旅行のたびに発生

特に見落とされやすいのが、シニア期の医療費です。猫の医療費は全額自己負担になるため、月々の積み立てか保険加入のどちらかで備えておくと安心です。

その譲渡費用、実は実費の半分以下

ここからは、譲渡にかかる費用、3〜4万円の裏側で何が起きているのかを見ていきます。

1頭あたりの収支は、こうなっている

白書でもっとも注目すべき数字が、譲渡1頭あたりにかかる平均費用9.6万円(人件費を除く)です。

項目金額
実際にかかっている費用平均9.6万円(人件費を除く)
里親が負担する譲渡費用3〜4万円程度
団体の持ち出し5〜6万円程度

1頭譲渡するたびに赤字が積み上がる構造です。実際、調査に回答した団体のうち活動費を全額自己資金で賄えているのは19.2%にとどまり、約8割の団体で自費負担が発生していました。

もっとも重い負担は「医療費」

団体が挙げた金銭的負担の内訳は、医療費が突出しています。

負担が重い項目回答割合
医療費87.5%
フード・消耗品代45.8%

なぜ医療費がこれほど重くなるのか。背景にあるのが、譲渡までの期間の長さです。滞在期間は中央値で6か月、平均8.6か月。猫の42.8%は1年以上、団体のもとで暮らしています。

長期化する理由として挙げられたのは、「持病・エイズなどのキャリア」「人馴れ・噛み癖」「シニア」でした。つまり、すぐに家庭が決まりにくい猫ほど、治療やケアに時間とお金がかかる。その間のフード代も医療費も、当然ながら団体が負担し続けます。

なぜいま、保護の現場は苦しくなっているのか

白書は、依頼そのものが増えている実態も示しました。

保護依頼が「増えた」団体は約半数

直近1年で保護依頼が「増加」「大幅増加」したと回答した団体は48.4%。地方では55.7%と、都市部(38.9%)を上回っています。

増加の理由は次のとおりです。

依頼が増えた理由回答割合
高齢飼い主の入院・死亡87.9%
多頭飼育崩壊65.5%
野良犬猫の繁殖51.7%

飼い主の高齢化は、猫の寿命が延びたことと表裏一体の課題でもあります。15年、20年と生きる猫を70代・80代で迎えた場合に何が起こるか。その受け皿を、いま民間の保護団体が引き受けています。

半数の団体が多頭飼育崩壊に対応している

過去1年で1回以上、多頭飼育崩壊の案件に対応した団体は50.8%。発生場所の約8割は個人宅で、猫の場合1件あたり平均16.8頭を保護しています。

背景として最も多く挙げられたのが、「経済的困窮による不妊去勢手術費用の不足」で82.0%。手術費用を工面できないまま繁殖が進み、手に負えなくなる——という流れです。

なお、新規保護の71.7%は「一般市民や野良からの直接引き取り」で、行政施設を経由していません。行政に相談したものの引き取りに至らず、民間に相談が流れてくるケースも多く報告されています。

「審査が厳しい」と感じたときに知っておきたいこと

保護猫を迎えようとすると、

  • 単身者不可
  • 高齢者不可
  • 室内飼育の誓約
  • 自宅訪問

など、想像以上に条件が細かいことに戸惑う人もいます。

ここまでの数字を踏まえると、団体側の事情が見えてきます。1頭を送り出すまでに平均9.6万円と半年以上をかけ、そのうえで返還や再保護が起きれば、費用も時間も振り出しに戻る。依頼増加の最大要因が「高齢飼い主の入院・死亡」である以上、「最後まで飼えるか」を確認する項目が増えるのは、現場の実感から来ているといえます。

条件が合わなかった場合も、「拒否された」と受け取る必要はありません。団体によって方針は異なりますし、条件付きで相談に応じるところ、後見人を立てれば受け入れ可能なところもあります。複数の団体を見てみることをおすすめします。

迎えるのが難しい人にもできること

住環境や家族の事情で、いますぐ猫を迎えるのが難しい人もいます。それでも保護の現場を支える方法があります。

  • 一時預かり(フォスター):譲渡先が決まるまで自宅で預かる。団体が医療費を負担するケースも多い
  • 物資の寄付:フード、猫砂、ペットシーツ。団体の負担2位が消耗品代であることを考えると、効果は小さくありません
  • 譲渡会でのボランティア:設営、受付、清掃など
  • 情報の拡散:長期保護になりやすいシニア猫や持病のある猫ほど、届く人の数がものを言います

不足しているリソースとして「資金」を挙げた団体は88.3%、「人手」も59.2%。どちらも慢性的に足りていません。

まとめ

最後に、この記事で見てきたことを整理します。譲渡費用はつまり、こういうことです。

| 実費9.6万円 / 里親負担3〜4万円 / 保護団体などの持ち出し5〜6万円 |

なぜ保護活動にお金がかかるの?と思われた方に、参考になれば幸いです。

ポイント内容
里親が払う譲渡費用3〜4万円程度。ワクチン・手術・検査などの実費にあたる
団体の実際の負担1頭あたり平均9.6万円。差額5〜6万円は持ち出し
背景にある変化保護依頼の増加(48.4%)。最大要因は高齢飼い主の入院・死亡(87.9%)
審査が細かい理由1頭に半年以上と数万円を投じている現場の実感の裏返し

冒頭の知人に、いまならこう答えられます。「かかるよ。でもそれは、その子がうちに来るまでに受けてきた検査と手術とごはんの記録で、しかも実際にかかった額の半分以下だよ」と。

譲渡費用は、その猫がこれまで受けてきたケアの記録でもあります。金額の背景を知ったうえで納得して迎える人が増えることが、結果的に保護の現場を支えることにもつながっていきます。

出典・参照

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この記事の執筆者 / 監修者

らみえる
らみえる
動物専門・ペット特化のWebライター・ディレクター・デザイナー。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、大手企業で広報や編集校正の仕事を経て、猫専門ペットホテル・キャッツカールトン横浜代表、動物取扱責任者、愛玩動物飼養管理士。
幼少期から犬やリス、うさぎ、鳥、金魚など、さまざまな動物と共に過ごし、現在は4匹の猫たちと暮らしています。デザインと言葉で動物の魅力を発信し、保護活動にもつなげていきたいと思っています。
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